博士課程での研究室変更のリスクとメリット

僕は他の人とちょっと違う経験をしていると誇れることが一つあります。

それは、

 

学士、修士、博士で違う研究室に所属したということです。

 

僕は、B4で配属された研究室に修士でも残る予定だったのですが、院試に落ちてしまい同じ学科の第二志望だった他の研究室に移動することになりました。幸いその研究室はB4でお世話になっていた指導教官の元いた研究室だったため、研究内容はあまり変わらずB4~M2の三年間は研究続けることができました。

その後、博士に進もうと思ったのですが、修士の研究室の教授が退官間近だったため博士課程の学生の募集を行っていませんでした。そこで、B4の頃所属していた研究室に戻ることも含めて行き先を考えた結果、博士課程では違う分野の別の研究室に進学(B4の研究室とは別)することにしました。

 博士課程での研究室選びはかなり迷いました。なぜなら、学部の時にいた研究室に戻れば、指導教官も知っているし研究内容もあまり変わらないことがわかっていたからです。しかし、周りは修士・博士と同じ研究室で過ごした人が多かったため、そのリスクがどれほどあるのか分からず、「博士課程 研究室変更」などとグーグルで検索して調べたりしましたが、生の体験談は中々出てこず悶々としました。

その中で最終的に決めた理由は

修士の専門と少し違うことをしてみたい

②新しい指導教官が面白い人だった

③元指導教官も後押ししてくれた

の主に三点です。

 

しかし当時は勢いで決めたものの、博士の研究室変更はデメリットの方が大きい気がして不安でいっぱいだったのですが、博士課程で一年ちょっとたった今、その決断を振り返ってみると、

研究室変更は自分にとってとても良い判断だった!

と心から思っています。(まだ博士課程の途中で判断するのは早すぎるかもしれませんが)

 

そこで本記事では、同じように悩んでいる人のために博士課程で研究室を変更するリスクとそのメリットを僕の体験に基づいて書いてみたいと思います。

 

 

リスク

  1. 業績が出にくい。
  2. 環境に適応できない可能性がある。

メリット

  1. いろんな研究スタイルを学べる。
  2. いくつか専門性を持つことで、独自性の高い研究ができる。

 

1. 業績が出にくい

先輩を見ると、B4からD3まで6年間同じ研究室にいて同じ研究分野で論文をしっかり二本以上書いて卒業している方が多かったので、博士から研究分野が変わって一からのスタートでちゃんと卒業できるかが一番の不安でした。

実際この不安は常について回るでしょう。僕は今でも不安です。

しかし、博士課程から研究分野が変わっても、修士で学んだことは意外と活きるものです。例えば、文献検索能力、実験の計画・実行のスピード、指導教官とのディスカッションの質、こういったものはどの分野でも共通です。もちろんはじめはその分野の基礎的なことを学ぶのに時間がかかりますが、抑えるべきところを抑える力はM1とD1では桁違いだと自分自身感じました。そのおかげと運もあってか、今の所僕の研究プロジェクトはいくつか問題を抱えつつもある程度計画通り前に進んでいると思います。

 

ただ、悩ましいのが学振です。DC1とDC21回目はM2とD1の春に書くのでまだ新しい研究室での実験が始まっておらず、「これまでの研究計画」と「これからの研究計画」の繋がりをどう書くかが難しいです。もちろん、うまく繋げてかけなくはないし、それで通ることも可能だとは思うのですが、想像以上に気を使います。僕は2年連続で落ち、今年2回目のDC2を出しましたが、これまでの研究とこれからの研究が繋がってるとここまで書きやすくなるのか...と衝撃を受けました。また、業績欄もD1での上乗せがなかなか期待できないため、少し不利な戦いになります。

 

2. 環境に適応できないリスクがある

幸い僕は新しい指導教官との相性もよくうまくやれていますが、研究室は狭い集団なので人間関係を含む環境に疲れてしまう場合があります。これは研究室は外から見ただけじゃ分からないので、所属する学生にそっと聞いてみたり、学科内の評判を聞いて見るのがいいと思います。しかし、それでも人の相性は実際一緒に研究して見るまで分からないので、リスクを0にすることはできないでしょう。

そういった意味では、修士をとった研究室の環境に大きな不満がなければ変えない方がリスクは低いと思います。

 

 

メリット

1. いろんな研究のスタイルが学べる

これは自分が一番感じたメリットです。僕の場合学部、修士の頃の研究室では、ミーティングが多く指導教官とのディスカッションも週の決まった時間に設けられていましたのでわかりやすいミーティング資料を作る技術が求められていましたが、博士に研究室ではミーティングが少なく、研究は指導教官との不定期のディスカッションベースであるため、自己管理能力が求められます。また指導教官も人間なので得意なこと、苦手のことがあり、それぞれ反面教師にすることもできます。例えば書き物が早い人、遅い人。指導が上手い人、下手な人。進捗を管理したがる人、管理したがらない人。

同じ研究室にずっといると指導教官との関係はだんだんマンネリ化し、日々同じことが求められるのでそれに関しては得意になる一方で、新しい学びは減り日々焦りが募ると思いますが、、僕の場合は修士の頃と今では求められていることが違い、日々成長を感じることができています。それが僕の場合日々の活力につながっているのだと思います。

ただ、これもリスクの2.と隣り合わせです。僕の場合良い指導教官と巡り会えたから良いものの、相性最悪だったら辛い日々が待っているでしょう。

 

2. いくつかの専門性を持つことで独自性の高い研究ができる。

これも見逃されがちですが大事な点です。そもそも僕が博士課程で研究室を移動しようと思ったのは、今の専門性に片足突っ込んでできるだけもう片足を遠くまで伸ばしてみようと思ったのがきっかけでした。

結局、研究室を移動した後も、修士の専門性を活かしつつ新しい研究室の研究に沿ったプロジェクトをしており、自分としてもとても価値のある研究ができていると思っています。

ただ、これも良い指導教官がいてこそです。自分のやってほしい研究を押し付ける指導教官だったらこんなことできていないし、今の自分がやっている研究もないかもしれません。

 

つまり、

博士課程で研究室変更をするなら、

良い指導教官を選んで自分の修士の専門性をギリギリ活かせる研究がベスト

だという結論に至りました。

 

繰り返しになりますが、個人的に一番メリットだと思うのは、二つの違う研究文化にどっぷり浸かることができることだと思います。これはずっと一つの研究室にいると気づかない点で、将来マネージメント側に回るであろう博士課程の学生には必要な経験なのではないでしょうか。

そういった意味では、海外のPhDコースでよくあるローテーションシステム(本配属決める前に数ヶ月づついろんな研究室を回る)はよくできていると思います。もちろん、経験していないのでわかりませんが、ある程度指導教員との相性もわかりますし、何よりその研究分野や研究室の文化をかじる程度はできそうですしね。

 

そのうち、小さい研究室と大きい研究室の違いについても書きたいと思います。

 

 

では。